ブルグミュラー練習曲 Op.100, 109 & 105 紹介 ピアノ初心者〜中級者におすすめの楽譜

25の練習曲 Op. 100(やさしい紹介)

ブルクミュラーの《25の練習曲 Op.100》は、ピアノを学ぶ人にとても人気のある練習曲集です。特に、バイエルなどでピアノの基本を学んだ初心者が、少し上のレベルへ進むときによく使われます。

この本には25曲が入っていて、一曲ごとに違った雰囲気があります。『素直な心』『アラベスク』『牧歌』『無邪気』『小さな集会』『貴婦人の乗馬』など、曲の名前から楽しい場面を想像できるものもたくさんあります。そのため、同じような練習をくり返すだけではなく、いろいろな音楽を楽しみながら練習できます。

ブルクミュラーのよいところは、「指を上手に動かすこと」と「音楽をきれいに表現すること」を一緒に学べることです。音符を正しく弾くだけでなく、強い音と弱い音を弾き分けたり、なめらかにつないだり、軽く弾いたりする練習ができます。右手のメロディーをよく聴きながら、左手を少し小さく弾くことも大切です。

練習するときは、最初から速く弾こうとしなくても大丈夫です。まず楽譜をよく見て、音やリズムを確認し、ゆっくり両手で弾いてみましょう。慣れてきたら少しずつ速くし、最後は曲の雰囲気や美しさを考えながら弾きます。

この曲集は、簡単な練習曲から少しずつ難しくなるので、自分の上達を感じやすいのも魅力です。全部の曲を急いで終わらせる必要はありません。一曲ずつ丁寧に練習して、「この曲は元気に」「この曲はやさしく」というように、それぞれの音楽を楽しむことが大切です。

《25の練習曲 Op.100》は、ピアノの基本を練習しながら、ただ音符を弾くだけではなく、「音楽を表現する楽しさ」を教えてくれる曲集です。バイエルの次の教材としても使いやすく、これからいろいろなピアノ曲を弾いてみたい人におすすめです。

ブルクミュラー「25の練習曲」
(全音楽譜出版社)

25の練習曲 Op. 100

ブルクミュラーの《25の練習曲 Op.100》は、ピアノを学ぶ初心者から初級後半の学習者にとって、とても親しみやすい練習曲集です。作曲者フリードリヒ・ブルクミュラー(1806–1874)が1851年に出版した作品で、日本では「ブルクミュラー」と呼ばれ、特にバイエルを終えた後の教材として長く親しまれています。

この曲集の大きな特徴は、練習曲でありながら、一曲一曲が小さな音楽作品として楽しめることです。ツェルニーのように技術練習を中心としたエチュードとは違い、旋律が美しく、曲ごとに異なる雰囲気や性格があります。『素直な心』『アラベスク』『牧歌』『無邪気』『進歩』『清らかな小川』『優美』『バラード』『貴婦人の乗馬』など、それぞれに違った表情があり、初心者でも曲のイメージを持ちながら練習できます。

バイエルでは、音符を読むこと、指番号、両手を合わせること、基本的なリズムなどを学びます。それに対してブルクミュラーでは、その基礎を使って、旋律を歌わせる、強弱をつける、フレーズを感じる、スタッカートやレガートを弾き分けるといった、より音楽的な表現を学びます。そのため、バイエルの「正しく弾く」段階から、「音楽として弾く」段階へ進むための橋渡しに適しています。

曲の中には、右手で旋律を弾きながら左手で伴奏をつける練習、音階的な動きをなめらかにつなぐ練習、和音をそろえて弾く練習、左右で異なるリズムを扱う練習など、初級から初中級へ進むために必要な技術が自然に入っています。技術だけを取り出すのではなく、「音楽の中で技術を使う」ことができる点が大きな長所です。

初心者は、音を間違えずに弾くだけでなく、強弱やフレーズにも注意するとよいでしょう。まず楽譜の音符、リズム、指使い、強弱記号などを確認し、必要なら片手ずつ練習してから両手でゆっくり弾きます。最初から速く弾く必要はなく、正確さと音の美しさを大切にして、慣れてきたら少しずつテンポを上げます。ペダルを使う曲では、音が濁らないよう、耳で響きを確かめながら練習することも大切です。

教師にとっても、この曲集は使いやすい教材です。25曲それぞれに違った技術や表現の課題があるため、生徒の弱点に合わせて曲を選べます。レガート、スタッカート、強弱、旋律と伴奏のバランス、リズムなど、具体的な課題を一曲ごとに設定できます。また、必ず番号順に進める必要はなく、生徒のレベルに合わせて曲を選んだり、難しい曲を後回しにしたりすることもできます。

この曲集では、自分の音をよく聴くことも重要です。旋律が伴奏よりもよく聞こえているか、スタッカートが軽く弾けているか、強弱が表現できているかを、自分の耳で確かめる習慣をつけると上達につながります。題名から曲の情景や性格を想像し、自分なりのイメージを持って弾くことも、音楽表現を学ぶよい方法です。

《25の練習曲 Op.100》は、単なる指の訓練教材ではありません。初心者が「楽譜を読む」「指を動かす」「音を聴く」「音楽を表現する」という基本を、一つの曲の中で学べる優れた曲集です。バイエルで身につけた基礎を発展させ、より豊かな音楽表現へ進むための教材として、現在でも非常に使いやすい存在です。25曲を終えることだけを目標にせず、一曲ごとに新しい技術と表現を身につけることを大切にすると、この曲集の良さを十分に生かすことができます。

ブルクミュラー「25の練習曲」
(全音楽譜出版社)

「25の練習曲 Op.100」と同程度の楽譜

ギロック《こどものためのアルバム》 同程度~やや易しい 表情豊かな小品。ブルクミュラーとの併用に最適
グルリット《こども音楽会 Op.210》 同程度 短く親しみやすい性格的小品
シューマン《子供のためのアルバム Op.68》 同程度~やや易しい 歌、行進曲、舞曲など多様な音楽を学べる
カバレフスキー《24の小品 Op.39》 同程度 リズム感があり、現代的な響きも体験できる
カバレフスキー《6つの小品 Op.27》 同程度 短く性格が明確で、子どもの学習に向く
チャイコフスキー《こどものアルバム Op.39》 同程度~やや上 ロマン派らしい旋律と表現を学べる
バッハ《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳》 同程度~やや易しい 読譜、声部、アーティキュレーションの学習に適する
バッハ《12の小前奏曲》 同程度~やや上 左右の手の独立とバロック様式を学べる
ツェルニー《100番 Op.139》 同程度 ブルクミュラーより技術練習の性格が強い
モーツァルト《ウィーンのソナチネ》 同程度~やや上 古典派のフレーズと形式を学べる
クーラウ《ソナチネ》 同程度~やや上 バイエル後の古典派入門として適する
クレメンティ《ソナチネ》 やや上 指の均一性と古典派の演奏法を学べる

18の練習曲 Op. 109

フリードリヒ・ブルクミュラーの《18の練習曲 Op.109》は、ピアノを学ぶ初級後半から中級への入り口にある人に適した練習曲集です。1858年に出版され、正式には《18の性格的な練習曲》と呼ばれています。楽譜の原題には、先に出版された《25の練習曲 Op.100》に続く作品であることが示されており、25曲で基礎を身につけた学習者が、さらに一歩進んだ演奏技術と表現力を学ぶための曲集として考えられます。全18曲からなり、一曲ごとに異なる性格と音楽的な特徴があります。

《18の練習曲》の大きな魅力は、《25の練習曲》と同じように、単なる指の訓練ではなく、技術と音楽表現を一緒に学べることです。ただし、内容は《25の練習曲》よりも一段進んでいます。より広い音域、細かな音型、装飾音、速いパッセージ、アルペジオ、左右の手の複雑な役割分担などが現れ、指を正確に動かすだけでなく、音楽全体を見ながら演奏する力が求められます。

各曲には「ないしょ話」「真珠」「羊飼いの家路」「ジプシー」「泉」「陽気な少女」「子守歌」「アジタート」「朝の鐘」「すばやい動き」「セレナード」「森の目覚め」「大雷雨」「ゴンドラの船頭歌」「シルフ」「別れ」「マーチ」「紡ぎ歌」といった性格を感じさせる題名があります。こうした題名も、この曲集を学ぶ楽しさの一つです。曲ごとに雰囲気が大きく異なるため、ただ機械的に練習するのではなく、「この音楽をどのように表現したいか」と考えながら演奏できます。

初心者にとっては、まず「《25の練習曲》より難しくなった」と理解しておくとよいでしょう。ただし、すべての曲が同じように難しいわけではありません。比較的取り組みやすい曲から、速い動きや複雑な技巧を必要とする曲まで幅があります。そのため、《18の練習曲》を始めるときは、18曲を必ず順番に完成させる必要はなく、先生と相談しながら自分に合った曲から選んでもよいでしょう。

この曲集では、特に「旋律を聴きながら伴奏を軽く弾く」ことが重要です。音符の数が多い部分では、つい動いている指に集中してしまい、主旋律が弱くなったり、伴奏まで強くなったりすることがあります。《紡ぎ歌》では、右手の細かな音型に気を取られず、重要なメロディーラインを意識することが演奏上の大切なポイントとされています。これは《18の練習曲》全体を学ぶうえでも、とても重要な考え方です。

また、《すばやい動き》のような技巧的な曲では、指を速く動かすことだけに集中すると、強弱が平らになりやすいという問題があります。速い音符を正確に弾くことと、音楽の強弱やフレーズを表現することを同時に行う必要があります。つまり、この曲集では「速く弾けること」よりも、「速い動きを音楽としてコントロールできること」が大切です。

《セレナード》では装飾音が重要な課題になります。音数が多いと、装飾音のほうが目立ってしまい、旋律が聞こえにくくなることがあります。そのため、装飾音を必要以上に強く弾かず、主要なメロディーをはっきりと歌わせることが重要です。このような練習を通して、指を動かす技術だけではなく、「何が音楽の主役なのか」を耳で判断する力が育ちます。

《大雷雨》では、強いリズムと大きな音の動きによって、嵐のような激しい性格が表現されています。このような作品では、音符を間違えないことに加えて、緊張感やクレッシェンド、アクセントなどを意識する必要があります。一方、《子守歌》や《ゴンドラの船頭歌》のような穏やかな曲では、音を急がず、旋律を美しくつなげることが大切になります。このように、曲によって必要な演奏方法が変わることも《18の練習曲》の重要な特徴です。

教師にとって、この曲集は「技術を音楽表現に結びつける教材」として特に価値があります。全音の楽譜の解説でも、フレージング、ペダル、発想を学ぶための入門曲集として紹介され、各曲について構成、技術、楽語などが解説されています。つまり、生徒に単に「正しい音を弾かせる」のではなく、音楽の構造を理解させ、適切なタッチやペダル、強弱を選ばせる教材として利用できます。

《25の練習曲》との違いを簡単に言えば、《25の練習曲》は初級者がピアノの基本的な表現を身につけるための非常に優れた入り口であり、《18の練習曲》は、そこからさらに進んで、より細かな技巧と豊かな音楽表現を身につけるための教材です。そのため、バイエル終了後に《25の練習曲》を学び、その後に《18の練習曲》へ進むという流れは、とても自然です。ただし、学習者によっては《25の練習曲》の後半と《18の練習曲》を並行して学ぶこともできます。

練習するときには、まず片手ずつ譜読みをして、指使いとリズムを確認し、その後ゆっくり両手で合わせます。速い部分は小さく区切って練習し、弾けるようになってから少しずつつなげます。ただ音符を正しく弾けるようにするだけでなく、旋律と伴奏のバランス、フレーズ、強弱、アーティキュレーション、ペダルまで意識すると、曲の完成度が大きく変わります。

《18の練習曲》では、特に「耳を使って練習する」ことが大切です。細かな音符が正確に弾けているかだけでなく、旋律が自然に聞こえているか、伴奏が重くなっていないか、強弱が伝わっているかを自分で聴きます。教師も「ここをもっと強く」と指示するだけではなく、「今、どの音が一番聞こえた?」「旋律は伴奏より前に出ている?」と問いかけることで、生徒自身が演奏を判断する力を育てられます。

《18の練習曲 Op.109》は、単に《25の練習曲》より難しい曲集というだけではありません。ピアノの基本技術を、より高度な音楽表現へ発展させるための教材です。速い音符、装飾音、アルペジオ、和音、幅広い音域などを練習しながら、それらを音楽の中でどのように使うかを学べます。特に、旋律を歌わせること、伴奏を軽く保つこと、強弱やフレーズを大きく考えることが重要です。

そのため、初心者が《18の練習曲》を学ぶ場合には、「18曲を全部早く終わらせる」ことを目標にする必要はありません。一曲ごとに新しい技術と表現を学び、その技術を次の作品へつなげていくことが大切です。《25の練習曲》で基礎を学んだ人にとって、《18の練習曲》は、初級から中級へ進むための非常に有益なステップとなるでしょう。ピアノ教師にとっても、生徒の技術だけでなく、和声感、様式感、フレージング、ペダル、そしてロマン派の音楽を表現する力を育てる教材として活用できます。

ブルグミュラー「18の練習曲」
(全音楽譜出版社)

「18の練習曲 Op.109」と同程度の楽譜

ヘラー《25の旋律的練習曲 Op.45》 非常に近い ブルクミュラーと同じく、技術と美しい旋律を同時に学ぶロマン派エチュード。メロディーと和声のバランスを学ぶのに優れる。全音もツェルニー30番と併用する教材として紹介している。
ツェルニー《30番練習曲 Op.849》 近い Op.109より「技巧」の比重が大きい。指の独立、均一性、音階、分散和音などを集中的に練習できる。Op.109の技術面を補う教材として非常に相性がよい。
シューマン《子供の情景 Op.15》 近い~やや上 Op.109の性格的小品から、本格的なロマン派作品へ進む橋渡し。旋律、声部のバランス、細かなニュアンスが重要。ヘンレでは曲ごとにレベル4~5程度の中級域に分かれる。
チャイコフスキー《こどものアルバム Op.39》 近い 短い性格的小品を通して、ロマン派の歌わせ方、音色、ペダル、舞曲的リズムを学べる。Op.109の「一曲ごとに異なる表情」という性格とよく合う。
カバレフスキー《24の小品 Op.39》 近い~やや易しい 短く性格が明確。リズム、スタッカート、アクセント、現代的な和声感を学べる。Op.109とは異なる音楽語法を経験できる。
グリーグ《抒情小曲集》第1集 Op.12 近い~やや易しい 小品としての表現力を磨くのに最適。第1曲《アリエッタ》や第4曲《妖精の踊り》などは中級域に入り、Op.109のロマン派的表現を発展させやすい。一方、第2・3・5曲などはやや易しい。
グリーグ《抒情小曲集》の中程度の作品 近い~やや上 美しい旋律だけでなく、ペダル、和声、音色、民族的なリズムを学べる。Op.109より音色面の要求が強くなる作品もある。
バッハ《2声のインヴェンション》 同程度の学習段階 技術の種類は違うが、Op.109で身につけた指の独立を使って、2つの旋律を同時に聴く力を育てる。ポリフォニーの基礎として重要。
バッハ《小前奏曲と小フーガ》 近い~曲により上 バロックの明瞭なアーティキュレーション、声部の独立、音楽の構造を学ぶ。Op.109とは対照的な学習内容を補える。

12の練習曲 Op. 105

ブルクミュラーの《12の練習曲 Op.105》は、《25の練習曲 Op.100》や《18の練習曲 Op.109》よりも高度な技術を求められる、ピアノ中級者向けの重要な練習曲集です。正式には《12の旋律的で華麗なる練習曲》といい、1854年に出版されました。全12曲で構成され、全曲の演奏時間は約25分40秒です。日本では《25の練習曲》ほど一般的ではありませんが、ブルクミュラーが書いた練習曲の中では、より本格的な演奏技術と豊かな音楽表現を学べる作品集です。

《25の練習曲》では、初級者がレガート、スタッカート、強弱、フレーズなどの基本的な音楽表現を身につけることが大きな目的でした。《12の練習曲》になると、それらをさらに発展させ、音階、アルペジオ、分散和音、重音、装飾音、速いパッセージ、広い音域での動きなど、より本格的なピアノ技巧が扱われます。同時に、単に指を速く動かすだけではなく、旋律を美しく歌わせ、伴奏とのバランスを整え、細かな強弱やフレーズを表現することも求められます。

この曲集の魅力は、「練習曲」と「演奏会用の小品」の中間にあるような性格です。各曲には旋律的で華やかな音楽があり、技術練習をしながら、ロマン派らしい表現を学ぶことができます。特に第1番ではアルペジオ、第11番ではトレモロと分散和音の伴奏の上で旋律を歌わせる技術など、曲ごとに異なる課題が置かれています。

中級者にとって最も大切なのは、「音符を全部正しく弾く」ことから一歩進み、技術を音楽のために使うことです。速いパッセージが出てきても、ただ指を速く動かして終わりにするのではなく、どの音が旋律なのか、どこにフレーズの頂点があるのか、どこで音楽が緊張し、どこで落ち着くのかを考えます。細かな音型が伴奏として働いている場合には、それを軽く保ちながら、旋律を前に出す必要があります。こうした練習は、ショパンやリストなど、より高度なロマン派作品へ進むときにも役立ちます。

また、装飾音や細かな音型は、単に指を動かすためのものではありません。装飾音が旋律を美しく彩っているのか、それとも音楽の流れを邪魔しているのかを耳で判断する必要があります。速い音符が多い曲でも、すべての音を同じ強さで弾いてしまうと音楽が平坦になります。したがって、指の正確さと同時に、音の重さ、タッチ、フレーズ、アクセントをコントロールする能力が重要になります。

教師にとって《12の練習曲》は、中級者の技術を一段上へ引き上げる教材として使いやすい曲集です。全音楽譜出版社も、この曲集について、ブルクミュラー《18の練習曲》やヘラーの《25の練習曲》に続いて必要となる練習曲であり、一般の作品と併用できる教材として紹介しています。また、旋律的な音楽の中にさまざまな技術的課題が組み込まれていると説明されています。

指導では、一曲ごとに「何を学ぶ曲なのか」を明確にすると効果的です。たとえば、ある曲ではアルペジオの均一性、別の曲では速いパッセージの軽さ、別の曲では旋律と伴奏のバランス、さらに別の曲では装飾音やペダルを課題にできます。これによって、練習曲を単なる「宿題」にせず、具体的な演奏能力を身につけるための教材として利用できます。

また、18曲すべてを同じ方法で練習する必要はありません。中級者の場合、現在の弱点に合った曲を選び、数曲を重点的に仕上げる方法も有効です。技術的に余裕のある曲では音楽表現を深く学び、難しい曲では必要な箇所を部分練習するという使い分けもできます。特に教師は、生徒の手の大きさ、指の独立、読譜力、テンポ感、音楽的な成熟度を考えて選曲するとよいでしょう。

《12の練習曲》ではペダルも重要になります。分散和音や広い響きを持つ部分ではペダルによって音楽的な効果を高めることができますが、踏み続けて音を濁らせてしまってはいけません。まずペダルなしでも指だけで旋律と和声を整理し、その後で必要な場所にペダルを加えるほうが、音楽の構造を理解しやすくなります。

学習の順序としては、《25の練習曲 Op.100》を終えた後に《18の練習曲 Op.109》を学び、さらに《12の練習曲 Op.105》へ進むという考え方が一つの目安になります。ただし、出版順と難易度の関係は単純ではなく、《12の練習曲》は1854年、《18の練習曲》は1858年に出版されていますが、実際には《12の練習曲》のほうが高度な内容を含むとされています。ブルクミュラーのこの3つの練習曲集が段階的に構想されたと考えられる一方、その出版事情や曲順には複雑な点もあります。

したがって、《12の練習曲 Op.105》は「ブルクミュラーだから初心者向け」と考えないことが重要です。《25の練習曲》とはかなり性格が異なり、中級者が本格的な技巧と音楽表現を身につけるための曲集です。ピアノ教師にとっては、ツェルニーなどの技術練習曲と一般のレパートリーの間をつなぐ教材としても利用できますし、学習者にとっては、練習曲でありながら美しい音楽を楽しみながら技術を高められる点が大きな魅力です。

特に大切なのは、速く弾くことや難曲を完成させることだけを目標にしないことです。正確な指の動き、均一なパッセージ、旋律と伴奏のバランス、自然なフレーズ、豊かな音色、適切なペダルを一つずつ身につけることで、《12の練習曲》は中級者の演奏を大きく成長させる教材になります。ブルクミュラーの親しみやすい旋律と高度なピアノ技巧が結びついているため、ツェルニーなどの純粋な技巧練習だけでは得にくい「技術を音楽へ変える力」を学べる、非常に価値のある練習曲集です。

ブルグミュラー「12の練習曲」
(全音楽譜出版社)

「12の練習曲 Op.105」と同程度の楽譜

ツェルニー《40番練習曲 Op.299》 かなり近い Op.105より技術訓練の性格が強い。音階、分散和音、指の均一性、速いパッセージを鍛える。Op.105の華麗な技巧を支える基礎作りに向く。
ツェルニー《50番練習曲 Op.740》 同程度~やや上 Op.105と同じく華やかな技巧を扱うが、よりヴィルトゥオーゾ的。指の敏捷性、跳躍、重音、アルペジオなどを高度に鍛える。Op.105からさらに上へ進むための教材。
ヘラー《25の練習曲 Op.45》 やや易しい~近い 旋律と和声を重視する音楽的なエチュード。Op.105ほど華麗な技巧には偏らず、フレーズ、歌わせ方、伴奏とのバランスを学びやすい。全音も技術練習との併用を勧めている。
ヘラー《25の練習曲 Op.46》 近い~やや上 Op.45より本格的で、音楽的な表現と技巧の両方を要求する。Op.105の「旋律+技巧」という性格に比較的近い。
シューマン《子供の情景 Op.15》 近い~やや易しい 技巧よりも音楽的成熟度を強く要求する性格的小品集。Op.105で学んだ旋律の歌わせ方やロマン派的表現を発展させるのに適する。
メンデルスゾーン《無言歌集》 近い~曲によりやや上 Op.105と同じく「旋律的・華麗」なロマン派小品。旋律を歌わせながら伴奏を軽く保つ能力を育てる。全体として難易度は中程度だが、曲による差が大きい。
グリーグ《抒情小曲集》 近い~曲により易しい/上 短い性格的小品で、旋律、音色、ペダル、民族的リズムを学べる。第1集は比較的易しいので、Op.105の前後をつなぐレパートリーとして便利。
ドビュッシー《2つのアラベスク》 やや易しい~近い 技巧の種類はOp.105とは異なるが、アルペジオ、ペダル、音色、柔らかなタッチを学べる。ロマン派から近代フランス音楽への橋渡しになる。ヘンレでは第1・2番ともレベル4。
ドビュッシー《夢(Rêverie)》 近い Op.105とは違い、速さより音色とペダル、旋律の浮かび上がらせ方が課題。ヘンレではレベル5。
ショパン《ワルツ集》の中級作品 近い~やや上 Op.105で身につけた華麗な右手の動き、旋律、伴奏のバランスを、より本格的なロマン派表現へ発展させられる。作品によって難易度が大きく異なる。
ショパン《ノクターン》の比較的易しい作品 近い~やや上 技巧そのものより、旋律の歌わせ方、装飾音、ルバート、伴奏のコントロールを要求する。ヘンレではOp.27-1・2をレベル6としている。
バッハ《平均律クラヴィーア曲集》第1巻の易しい前奏曲とフーガ 技術的には別方向の同程度 Op.105のロマン派的技巧とは対照的に、声部の独立、ポリフォニー、構造を学ぶ。中級者の総合的な力を伸ばすのに有益。
モーツァルト《ピアノ・ソナタ》K.283など 近い~やや易しい Op.105とは異なる古典派の技術。音階、分散和音、明快なフレーズ、左右のバランスを学び、演奏の基礎を広げる。ヘンレではK.283をレベル5としている。
ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ Op.14-1, Op.14-2》 近い~やや上 Op.105の短い練習曲から、より大きな形式を持つ本格作品へ進むための橋渡し。古典派特有の構成感とアーティキュレーションを学ぶ。
ブラームス《ワルツ Op.39》 近い~やや易しい/上 Op.105とは違う落ち着いたロマン派表現。内声、和声、声部のバランス、柔らかなタッチを学ぶ。

ブルクミュラー「25の練習曲」
(全音楽譜出版社)

ブルグミュラー「18の練習曲」
(全音楽譜出版社)

ブルグミュラー「12の練習曲」
(全音楽譜出版社)

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