バイエル ピアノ教則本 初心者への紹介 使用法 併用して練習するおすすめ楽譜リスト

やさしい紹介

フェルディナント・バイエルの《ピアノ教則本 Op.101》は、ピアノをはじめたばかりの人が、少しずつ基本を身につけていくための教則本です。日本では「バイエル」という名前で広く知られており、長い間、子どもから大人まで多くの初心者に使われてきました。

この教則本では、最初は楽譜の読み方や指の番号、鍵盤の場所など、ピアノを弾くために必要なことから学びます。そして、右手や左手の練習から始めて、だんだん両手を一緒に使う練習へ進んでいきます。簡単な課題から少しずつ難しくなるので、初めてピアノを弾く人でも練習しやすい構成になっています。

バイエルで大切なのは、音符を間違えずに弾くことだけではありません。楽譜を見て音やリズムを理解し、指を思い通りに動かし、両手を合わせて弾く力を育てることができます。これらは、どんなピアノ曲を弾くときにも必要になる基本的な力です。

練習するときは、最初から速く弾こうとせず、ゆっくり正確に弾くことを大切にしましょう。音やリズムを確かめながら何度か練習し、慣れてきたら少しずつ速くしていきます。手や指に力を入れすぎず、自分が出している音をよく聴くことも大切です。

バイエルは、きれいな名曲を楽しむための曲集というより、ピアノを上手に弾くための基礎を学ぶ本です。そのため、バイエルと一緒に、バッハやブルクミュラー、ギロックなどの楽しい曲を弾くのもおすすめです。基礎練習と好きな曲を組み合わせることで、ピアノを学ぶ楽しさも広がります。

バイエルは、ピアノの長い学習の最初に「楽譜を読む」「指を動かす」「両手で弾く」という基本を身につけるための、分かりやすい入門教材です。一曲ずつあせらず練習していけば、少しずつ弾ける曲が増え、次のピアノ曲へ進むための力が身についていきます。

詳しい紹介・解説・使用法

フェルディナント・バイエル(Ferdinand Beyer, 1803/1806–1863)の《ピアノ奏法入門書 Op.101(Vorschule im Klavierspiel)》は、ピアノを初めて学ぶ人のために書かれた19世紀の代表的な教則本です。一般には単に「バイエル」と呼ばれ、日本では明治時代から非常に長く使われてきました。原著は1850年頃に出版され、現在も世界各地で楽譜が出版されています。特に日本での普及は大きく、1889年にはアメリカの音楽教育家L. W. メーソンによって当時の日本の音楽教育機関でピアノ教材として採用されました。

《Op.101》という作品番号だけを見ると一つの大きな曲のように思えますが、実際には、初心者がピアノを学ぶための多数の短い練習曲と予備練習からなる教材です。原題には、幼い学習者のための「ピアノ奏法入門書」であり、106曲の2手・3手・4手の練習曲、予備練習、指の練習、音楽の基礎を含むことが示されています。つまり、単に簡単な曲を集めた曲集ではなく、「楽譜を読むこと」から始めて、少しずつ鍵盤上で音楽を扱えるようにすることを目的とした体系的な入門教材です。

バイエルの最大の特徴は、難しいことを一度に要求せず、非常に小さな段階に分けて技術を導入していることです。最初は音符や休符、音価、拍子、鍵盤の位置など、ピアノを弾くために必要な基本事項を学びます。その後、右手だけ、左手だけ、両手という順序で練習し、さらに教師と生徒が一緒に演奏できる3手連弾や4手連弾も登場します。現在の教則本では当然のように思える「先生と一緒に演奏する」という方法も、バイエルの構成の中にすでに取り入れられています。

初期の練習では、五本の指を比較的狭い音域に置いて、指を順番に動かすことが中心になります。特に前半では、基本的に5音程度の範囲で構成された練習曲が多く、初心者が鍵盤と楽譜を結びつけるのに適しています。右手と左手を別々に動かすだけでなく、両手を同時に動かすことによって、目で楽譜を読みながら左右の手を別々にコントロールする能力を少しずつ育てていきます。

この「少しずつ」という点は、バイエルを理解するうえで非常に重要です。初心者にとってピアノは、右手、左手、目、耳、リズム、指番号などを同時に扱わなければならない楽器です。いきなり広い音域を弾いたり、複雑な伴奏を加えたりすると、楽譜を読むことと指を動かすことの両方が難しくなります。バイエルでは、最初はできるだけ単純な動きに限定し、それを繰り返しながら、徐々に新しい要素を加えていきます。そのため、ピアノを初めて学ぶ人にとって「何を練習すればよいのか」が比較的明確です。

前半の練習では、五指の基本的な動き、音符の読み方、両手の協調、基本的なリズムなどが中心になります。右手と左手が同じような動きをする練習から始まり、両手をオクターヴ違いで動かす練習などへ進みます。このような準備を重ねることで、初心者がいきなり複雑な両手奏に入ることを避けています。バイエルの構成を詳しく見ると、単純な練習の繰り返しに見える部分にも、次の段階へ進むための準備という役割があります。

第64番あたりまでを一つの大きな前半として考えると、その後の第65番以降では、明らかに技術的な内容が変化します。特に重要なのが指くぐりです。親指を使って音階を移動するための基本的な動作が登場し、そこから音階、より広い音域、複雑なリズム、装飾音、半音階など、初心者には一段難しい技術が加わっていきます。つまり、バイエルは最初から最後まで同じ種類の簡単な練習を続けるのではなく、前半で基礎的な両手奏を準備し、後半で鍵盤上をより自由に移動するための技術へ進む構成になっています。

後半に入ると、単に「音を正しく押す」だけでは十分ではなくなります。指くぐりによって手の位置を移動させ、音階を滑らかに弾き、音域の広い旋律を扱い、8分音符などのリズムを正確に演奏する必要が出てきます。さらに装飾音や半音階も加わるため、前半で身につけた基本的な指の独立や両手の協調が、実際の音楽的な演奏へと発展していきます。バイエルを最後まで丁寧に進めることには、単に「106番まで終わった」という以上に、次のレベルのピアノ作品へ進むための基礎を整える意味があります。

一方で、バイエルは現代のピアノ教育の観点から見ると、現在の総合的なピアノ・メソッドとは少し性格が異なります。現代の教材では、読譜、リズム、テクニック、音楽表現、聴音、即興、さまざまなジャンルの曲などを一つの教材の中で幅広く扱うことがあります。それに対してバイエルは、現代の教材と比較すると「ピアノの技術を段階的に身につけるための教則本」という性格が強く、特に技術教材として見ることができます。現在出版されている英語版の解説でも、20~21世紀のピアノ・メソッドと比較すると、むしろテクニック・ブックに近い性格があると説明されています。

そのため、初心者がバイエルを使う場合には、一曲を「弾けるようにする」だけで終わらせないことが重要です。たとえば新しい曲に取り組むときは、まず楽譜を見て、調号、拍子、音符、休符、指番号などを確認します。次に、必要なら右手と左手を別々に練習し、その後に両手でゆっくり弾きます。最初から速く弾く必要はありません。むしろ、ゆっくりしたテンポで正しい音、正しいリズム、自然な指使いを確認し、間違いを減らしてから徐々に速度を上げるほうが効果的です。

特に教師が指導する場合には、バイエルの番号を単純に「何番まで進んだか」という進度表にしないことが大切です。同じ番号まで進んだ生徒でも、楽譜を読む力、リズム感、指の独立、音の聴き方、両手の協調、音楽的な表現力には大きな違いがあります。したがって、「第30番まで終わった」「第50番まで弾いた」ということだけで生徒の実力を判断するのではなく、それぞれの練習曲で何を身につけたかを見るほうがよいでしょう。

また、バイエルでは指番号を単なる暗記項目として扱わないことも重要です。指番号は、楽譜を弾きやすくするための具体的な手段です。同じ曲でも手の大きさや指の長さによって多少の調整が必要になる場合がありますし、古い版と新しい版では指使いが変更されている場合もあります。実際、バイエルの指使いとその変遷について研究も行われています。したがって、教師は印刷された指番号を絶対的な規則として教えるのではなく、「なぜこの指を使うと弾きやすいのか」を生徒に理解させることが大切です。

バイエルのもう一つの重要な特徴は、教師と生徒が一緒に音楽を作ることを想定した練習が含まれていることです。3手連弾では教師が加わって音楽的な伴奏を作ることができ、4手連弾では生徒が一人で練習する場合とは違った音楽の流れを経験できます。これは初心者にとって非常に有効です。まだ自分だけで十分な表現ができなくても、教師の演奏を聴きながら一定の拍を保ち、相手の音を聴いて演奏する経験ができます。バイエルは単なる「一人で指を動かす練習帳」ではなく、もともと教師による指導を想定した教材でもあります。

初心者がバイエルを使用するときは、一日に大量の曲をこなす必要はありません。むしろ、その日の課題を数小節ずつ丁寧に練習し、翌日に前日の内容を復習してから新しい部分へ進む方法が適しています。簡単に見える曲でも、音を間違えずに弾くことだけを目標にせず、一定のテンポを保つこと、音の強さをそろえること、フレーズを意識すること、手や腕を必要以上に緊張させないことなどにも注意すると、教材としての価値が大きくなります。

さらに、バイエルを使っている間にも、できるだけ早い段階から小さな作品を「音楽」として楽しむことが重要です。バイエルの練習曲は基本技術を身につけるためのものなので、すべての曲がコンサート用の魅力的な作品として書かれているわけではありません。そのため、バイエルだけを延々と練習すると、初心者が「ピアノとは練習曲を弾くもの」という印象を持ってしまう可能性があります。バイエルと並行して、短いクラシック小品、童謡、簡単な舞曲、バロック作品などを弾かせると、技術練習と音楽的な楽しさを両立しやすくなります。

逆に、バイエルを「古い教則本だから現在では意味がない」と考える必要もありません。19世紀の教材なので、現代のピアノ教育とは異なる部分がありますが、初心者に必要な基本的な課題、つまり楽譜を読むこと、鍵盤の位置を理解すること、指を独立して動かすこと、左右の手を協調させること、基本的なリズムを身につけることなどは、現在でもピアノ学習の重要な基礎です。現在もさまざまな出版社からバイエルの版や改訂版、併用曲付きの版が出版されていることからも、その教材としての役割が完全になくなったわけではありません。

特に成人の初心者にもバイエルは利用できます。原著は子どもを意識した教材ですが、基本的な内容そのものは年齢を問わず利用できます。大人の場合は、子ども向けの絵や説明が多い現代教材よりも、簡潔に練習曲が並んでいるバイエルのほうが使いやすいと感じることもあります。ただし、成人の場合でも、すべてを機械的に順番通り終える必要はありません。すでに読譜や片手奏ができる場合には、教師が適切な番号から始めたり、必要な練習だけを選んだりすることもできます。

反対に、非常に幼い生徒に対しては、原典の順番をそのまま厳密に進めることが必ずしも最善とは限りません。生徒によって手の大きさ、集中力、読譜能力、音楽経験が違うためです。教師がバイエルを中心教材として使う場合には、バイエルの練習曲を一つの基準として利用しながら、歌う、リズムを打つ、鍵盤を探す、先生と連弾する、簡単な曲を聴くといった活動を組み合わせると、より豊かな学習になります。

バイエルの終盤まで進んだときには、初心者としての最初の段階をかなり越えています。もちろん、バイエル終了がそのまま「初級修了」を意味するわけではありませんが、音階や指くぐり、半音階、より複雑なリズムなどを経験しているため、次の教材へ移るための土台ができています。ここからは、ツェルニー、ブルクミュラー、ソナチネ、バッハの小品、シューマンやチャイコフスキーなどの初級作品、さらにショパンなどへ、目的に応じて進んでいくことができます。

したがって、《ピアノ教則本 Op.101》を最も分かりやすく表現するなら、「ピアノを弾くための最初の技術と読譜を、非常に細かな段階に分けて学ぶための古典的な入門教則本」といえるでしょう。華やかな名曲を学ぶための曲集ではなく、ピアノ演奏の基礎を作るための教材です。初心者にとっては、音符を読むこと、両手を使うこと、指を独立させること、一定のリズムで弾くことを少しずつ学べる点が大きな利点です。教師にとっては、生徒の基礎的な技術を確認しながら、次の段階へ進むための材料として利用できます。

そして、バイエルを最も効果的に使うためには、「番号を早く進めること」よりも、「一つ一つの練習から何を学ぶか」を大切にすることが重要です。簡単な曲ほど、正しい姿勢、自然な手の形、無理のない指使い、安定したリズム、きれいな音、フレーズ、強弱を丁寧に確認できます。そうして身につけた基礎は、バイエルを終えた後にブルクミュラー、ツェルニー、ソナチネ、バッハ、ショパンなど、より本格的なピアノ作品を学ぶ際にも役立ちます。バイエルは古い教材ではありますが、ピアノ学習の最初に必要な「読む・動かす・聴く・合わせる」という基本を順序よく経験できる点に、現在でも大きな価値があります。

「標準バイエルピアノ教則本: 併用曲付」
(全音楽譜出版社)

バイエルが難しい場合のよりやさしい楽譜やテキスト

トンプソン《小さなピアニスト》

音符を読むことと鍵盤を弾くことを、非常にやさしく学べます。子どもには特に使いやすい教材です。

バスティン《ピアノ ベーシックス》

五指ポジションを中心に、読譜・リズム・和音をバランスよく学べます。バイエルより現代的な構成です。

ギロック《はじめてのギロック》

とても短く、親しみやすい曲が多く、技術的に難しくないのに「音楽を弾いている」という楽しさを感じやすいです。

田丸信明《ぴあのどりーむ》

初学者の教材として使いやすく、短い曲を楽しみながら段階的に進められます。

バーナム《ピアノ・テクニック》

小さな動作をイメージした短い練習曲で、指を動かすことへの抵抗を減らせます。

ピアノ・アドベンチャー

読譜、リズム、コード、簡単な曲を組み合わせて学べる現代的な教材です。

バイエルと並行して使いやすい楽譜

バイエルは基礎練習の性格が強いので、別に「弾いて楽しい曲」「教育的性格小品」を使用して練習すると学習が続きやすくなります。

ギロック《こどものためのアルバム》
ギロック《叙情小曲集》
ブルクミュラー《25の練習曲 Op.100》
シューマン《子供のためのアルバム Op.68》
チャイコフスキー《こどものアルバム Op.39》
カバレフスキー《24の小品 Op.39》
カバレフスキー《こどものための6つの小品 Op.27》
バッハ《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳》
バッハ《小前奏曲と小フーガ》の易しい作品
グルリット《こども音楽会 Op.210》

バイエル終了後に練習する楽譜

バイエル終了後は多くのピアノ学習者はブルクミュラー「25の練習曲 Op.100」に進んみます。「ブルクミュラー」と並行して練習すると効果的で楽しく、表現やテクニックを伸ばせる楽譜は以下の通りです。

ブルクミュラー《25の練習曲 Op.100》
ツェルニー《100番練習曲 Op.139》
ギロック《こどものためのアルバム》
ギロック《叙情小曲集》
バッハ《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳》
バッハ《12の小前奏曲》
バッハ《6つの小前奏曲》
グルリット《こども音楽会 Op.210》
カバレフスキー《24の小品 Op.39》
カバレフスキー《こどものための6つの小品 Op.27》
チャイコフスキー《こどものアルバム Op.39》
シューマン《子供のためのアルバム Op.68》
ソナチネ・アルバム 第1巻のやさしい作品

「標準バイエルピアノ教則本: 併用曲付」
(全音楽譜出版社)

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